・ギャラリー、最後の日々
この時はまだ知らなかった。カナディアンワールド公園の廃園の先立ち、ギャラリーが廃館となることを。
そんな暢気なある日。
M:「あー穏やかだなー」 新:「ねーねーおじさーん、見て見てこれー」 M:「はぁ、アリス画の新作でございますか。」 新:「そだよー綺麗だよねー楽しそうだしー。」 M:「そうでございますなぁ。目の毒目の毒」 新:「でぇ、おじさんにおねがいがあるんだけどー」 M:「は、はい???な、なんでしょういきなり?」 |
新:「おじさん。この書類にサインして。」 M:「は?が、ガイノイドとの婚姻はこの国では認められておりませんが・・・?」 |
新:「そんなボケはいいからサインして。」 M:「は、はぁ。違うのですか。ま、まさかエリア88行きとかバトリングの専属契約???」 |
新:「とりあえずー何でもいいからこれでちゃちゃっとサインして?」 M:「そ、そういうのはよーく契約内容を確かめてからですねぇ。」 新:「いーから、ほら。サインして。」 M:「いやこれってアリス画新作の契約書・・・」 新:「そだよーちょっと画商さんに頼んでちょっと送ってもらったのー」 M:「ちょ、ちょっと待ってくださいよ新依名さん、頼むのはちょっとで済んでも払いはちょっとで済む額では・・・」 |
新:「ちゃちゃっとサインすればこのステキな絵画が大判で当家のものにっ!」 M:「そ、そこは”あなたのものに”とは言わないのですね」 新;「そりゃーそうよ。おじさんのになんてなるわけないじゃない。あたしたち三姉妹のもの。だからサインして。」 M:「いや私がサインをするならそれは理屈がおかしいというもので・・・」 新:「しかたないなー、じゃ、今回特別に大判画に加えてステキなヒロインアップもセットで!」 M:「いやいや大判画一枚だけでも大変なのに」 新:「これを飾れば御嬢様領域の楽しさもアップアップ、あたしの魅力もアップするからぁ。」 M:「いや今回の衣装は発表会ドレスであって定番のアリス服とは違うドレスでありまして・・・」 新:「大丈夫だよぉ発表会ドレスなら見つかるよ、多分」 M:「いやそのドレスはどうやって調達を・・・」 新:「おじさんが直接服屋に行くと似合わないから、そりゃもうポチポチッとネットで・・・」 M:「は、払いは・・・?」 |
新:「もちろんおじさんだよ。それが使用人のセ・キ・ム」 M:「いやしかし私の経済力にも限りがありまして・・・」 新:「でもほら、こんなに綺麗だよ?大判画が御嬢様領域にあったりここに展示したりしてあったらよくない?」 M:「いいいいやもちろんそうではございますが・・・やはりその予算の問題や私の老後の問題でありますとか諸々・・・」 新:「ふぅーん、そういやおじさんの残機いくつあったっけ?」 M:「は?」 |
M:「げげっ!」 |
M:「は、はいぃぃぃぃサインさせて頂きますぅ」 新:「わかればよろしい」 M:「よ、ようやく回復の兆しを見せてきた将来への蓄えがぁ大事な種籾がぁ」 新:「さぁさぁちゃっちゃと1ミリ秒でサインしなっグズはキライだよっ」 M:「うぅぅぅ」 |
M:「うぅぅ、か、書きましたぁ」 新:「ふむ、では・・・」 |
新:「おい、そこのお前。この印鑑をおすのだ。」 |
新:「お す の だ」 M:「はいぃぃぃぃぃ」 |
新:「さぁーってこれで契約完了!あとはあたしが送っといてあげるから、支払いよろしくぅー」 M:「うぅ、いいのかこれで・・・ガイノイドに虐げられる人間の尊厳とは何処に・・・」 新:「え?なんか言った?」 M:「い、いえ、なんでもございませんんんんん」 新:「だよねぇ。あたしたちにお仕えできて幸運だよっおじさんは。」 M:「は、はぁ。はいぃぃぃぃぃ・・・」 |
はい。以上のやりとりはフィクションです。実在の作家、作品、画商、人形、使用人とは関係ない・・・かもしれません。(笑)
まぁその、こんなアリスに迫られてしまっては契約しないわけにですねぇ・・・ハハハ。
ええとその、ホンモノの契約書をこんなネタに使わせて頂きました。画商の皆様方にはこの場を借りて謝罪いたします。つい出来心で・・・。
他にも、”勝手に模型展”でも出てきたスマートフォン向けシューティングゲーム、アカとブルーがアーケードゲームの新作として登場!それに先だって札幌スガイでなんとロケテストが開催ッ!というのを記念して、頭と眼だけブルーさん風の鈴さんに、ポスターや貴重なカセットテープ版サントラ(ギターで参加のゲーセンミカドのイケダミノロック店長のサイン入りだッ)など、勝手に応援展示したり・・・(だから何故カナディアンワールドで?ドールフォトギャラリーで???)
実のところこの企画、全道でたった一人か二人だけに笑ってもらって少しでも無念を和らげようというものでした・・・ある程度、少しでも目的は達せられたようです・・・やってよかった。
例年のようにDPH会員によってギャラリー前の花壇が整備されたり・・・
いつもののどかな開館の日々が展開されておりました・・・が。
その日は突然やってきた。突然の廃館。突然の撤退。全てをあの日、13年前以前の姿に戻して我々ドールフォト倶楽部北海道はこの地を去った。
カナディアンワールド公園の廃園は2019年10月20日と定められていましたが、それに先立つギャラリーの廃館・・・
その故について、今は語る言葉を持たない。いつかそれを語るこのできる日が来るまで、お互い皆生きて在ろう。
慣れ親しんだこの建物に、戻ることはもうない。
ドーラーは去った。
人形も消えた。
13年前から賑わいし
狂える趣味人の嬌声も
今は、はるか
郷愁の彼方へ消え去り
盛衰の於母影を
ただ君の切々たる胸中に
残すのみ
ドーラーも人形も降り立たぬフロンティアに我々はいる
故ドールフォト倶楽部北海道芦別カナディアンワールド公園ギャラリーに捧ぐ
・・・だが、人形といる生活は、
次回予告 ドールフォトギャラリーは突如として喪われた。 ある者は嘆き、ある者は憤り、ある者は互いの顔色を窺っていた。 そして持ち込まれていた全てが引き払われた。額、装飾品、調度品。 それらは彷徨える魂となり、深い闇へと封じられた。 その魂が、再び蘇る日があるのか。 次回、ギャラリーの魂とDPHの精神 その魂を呼び覚ますものは、何か。 |